※2018年に週刊Lifenesiaに掲載された記事です。
目次
屋台からスタート。ステーキにかける情熱
インドネシアで大人気のステーキ専門店『Holycow』店主インタビュー!趣味だった料理を生かして飲食業に転身しステーキ屋が大ブレイク!大成功を納め続けるインドネシア人オーナーにインタビューしました。
プロフィール
Chef Afit(アフィット氏)39歳現在は弟のArief(アリフ氏)がオペレーティング、奥さまがマーケティングを担当する。
HP|steakholycow.com
Twitter|twitter.com/steakholycow
料理が趣味で当初はビジネスにしようとは考えていませんでした。ステーキの外食は高価なので自分で作れるよう研究を重ねました。
当時、開店資金7000万ルピア、三ヶ月間で累積黒字化に!
屋台から始められたそうですが、いつ頃で当時は何歳でしたか?また、それまでは何をやられていたのですか?
8年前の2009年で31歳のときに屋台を始めました。屋台を始めた時も『RCTI』(MNCグループ)というテレビ局で働いていました。昼間はテレビ局、夜は屋台。二つの仕事を掛け持ちしていました。
昼夜働くことで、体力的にキツイとかなかったのですか?
毎日夜11時まで働いていましたが、面白さと周りの助けで疲れや辛さを感じることはありませんでした。
もともと飲食業に興味があったのですか?
料理が趣味でしたが、ビジネスにしようとは考えていません。ステーキが大好物で最初は母親に作り方を教えてもらったのですが、もっと美味しくならないかとスパイスや調味料をいろいろ試し、さらに香草を使ったソースを研究しました。インドネシアで特別な食事といえばステーキです。しかしレストランで食べると高価なので、自分で美味しく調理しようと思いました。そして家族や友人にふるまったら評判がよく、店をやってみればと言われるようになって始めるに至りました。
最初から商売の勝算があると思っていましたか?
屋台をオープンさせる前からマーケットとして需要があると思っていました。インドネシア人はお肉が好きなのに安くて気軽に食べられる店がなかった。だから安価で美味しいステーキを提供できれば、お客さんは喜ぶし、商売も成功すると思いました。あとはWAGYUを安く提供している店がなかったこともポイントです。実際に蓋を開けてみれば自分が思っていた以上に人気がありました。
開店資金はどうされたんですか?
お金はありませんでした。運営スタッフは5人で、私ともう一人のパートナー2人で7000万ルピアをかき集めてスタートさせました。私自身、昼はテレビ局の仕事があるので、夜だけ貸してもらえる昼営業のみ飲食店を探しました。最終的にはラジオダラム通り(ジャカルタ南部)のお店の駐車場にテントを張った屋台で営業をはじめました。
開店のお知らせなど、宣伝はどうされたんですか?
『ツイッター』を利用しましたが、あっという間にフォロワーが増えて、同時に来客もどんどん増え、開店資金も三ヶ月で回収することができました。ちなみに、この『ツイッター』は今でも続けています。
現在は屋台の頃と比べると格段に経営規模が大きくなったのですか、こうなることを想像していましたか?
全然、想像していません。テレビ局の給料と同じくらいの利益があればいいと思っていました。だけど始めてみるとあまりの反響の大きさにこれは需要があると判断し、2ヶ月でテレビ局を辞めて本格的に転身しました。そして半年後に2号店の『セノパティ店』をオープンさせました。
行動の早さに驚かされます。それにしてもテレビ局を辞めることに抵抗はなかったのですか?
インドネシアでテレビ局は人気職種です。特に『RCTI』は人気が高く入社も難しいです。しかし迷いはありませんでした。屋台を立ち上げることが数年前からの夢で、計画を立てながら機会を窺っていました。そして辞めたことを後悔したこともありません。
辞職後も複数の店舗を立ち上げられるのですが、決断力を後押したものは何ですか?
屋台がヒットしたあとは「この味を真似されたら困る。早く次の店を出さなければ」という思いが募り、すぐに動くようにしました。また当時は飲食ビジネスが上昇中だったことも急いだ理由です。
Aの次はBといった段階の目標設定みたいなものを強く意識しましたか?
次はこのあたりに出店したいと、ぼんやりとしたイメージはあるのですが予定よりも早く店舗展開しました。ジャカルタ郊外でもビジネスが成立するとわかってからは、地方にも進出しました。バリ、スラバヤ、メダン、ジョグジャカルタなどです。
今後もインドネシア国内で支店を増やす予定なのですね。
急激なスピードで店舗を増やしたこともあって、今は全店舗が高いクオリティーをキープするための改善が必要で、今はそのことに集中したい。そして安定したら、また新しい店舗を手がけたいと思います。今後はインドネシアのみならず、フィリピン、ベトナム、タイなど東南アジアにも進出できればいいですね。またジャカルタの店には日本人のお客さんも多く、日本人の舌にも合うのかなと思っており、将来的には日本でもオープンさせたい思いもあります。
初めて和牛を食べた時の衝撃は忘れません。興奮しすぎて眠れませんでした(笑)
スタッフ教育で大切なのは自分の感情のコントロール
成功の裏には、努力やひらめき、継続、仲間の助けなど様々な要素があると思われるのですが、大切にしていることは何ですか?
その時々で異なるので一つには絞れません。今は社内教育をしっかりさせることです。『ホーリー・カウ』は価格設定が安いので、仕入れをはじめ、様々な工夫が不可欠です。そのためには社内スタッフが明確なビジネスマインドを持たねばなりません。おそらく日本人の場合はスタッフ教育という点でさほど難しくはないと思われますが、インドネシアスタッフの教育は簡単ではありません。そこをいかにするかが今の課題でもあります。
インドネシア人スタッフを教育する上でのポイントをいくつか教えて下さい。在留日本人も現地インドネシア人と仕事する際の苦労をよく聞くので、その参考になればと思うので是非教えて下さい。
一番のポイントは自分の感情をコントロールすることです。部下に対する怒りの感情を抑え、きちんと教えることは難しいのですが重要です。ときには怒ることも必要ですが、基本的には相手の様子をよく見て、相手に合わせながら、接することが肝心です。
レストラン経営に必要なのは、第一に美味しい料理があって、さらに内装やロケーション等あらゆる要素が加味されると思われますが、何よりスタッフのマネージメントが大切なんですね。
美味しければ、また来たいと思ってくれます。だけど現場のサービスが悪いと来てくれません。今はサービス向上のためのスタッフの教育が必要だと思っています。例えばお客さんとの会話や身だしなみ、そこらへんに力を入れてトレーニングしてます。やはり直接お客さんと触れ合うスタッフのサービス精神は重要課題です。
接客の教育方針はどうやって決めているのですか?
接客系のコンサルタントにお願いしていて、話し合いながらマニュアルブックを作ろうとしています。今後はトレーニングルームみたいなものを作って、そこで新人教育などをできるようにしたいですね。
『ホーリー・カウ』に来たら「まずはこれを食べろ」ってメニューは何ですか?
WAGYUです。400gのビッグサイズも人気ですが、とりあえずグラム数は関係なく『オーストラリアWAGYU』を食べてほしいですね。WAGYUはジューシーで柔らかい。そういう肉質はインドネシア人にとても好まれるので、インドネシアでもブランド力は強いです。
WAGYUはオーストラリア産で日本の商社を通しています。常にいい肉質をキープすることには神経を注技ます。
WAGYUを初めて食べたときはどうでしたか?
初めてWAGYUを食べた時のことは忘れられません。衝撃的で眠れませんでした(笑)美味しすぎてずっと考えていました。
美味しいからこそ、お客さんに支持されると思われますが、『ホーリーカウ』が他のステーキ店に負けない要素は何ですか?
旨味と脂身、インドネシア人が好みそうな風味を集約した肉を使用しています。あとは数種類のソース。『Wソース』と『マッシュルーム・ソース』が人気ですが、両方とも私が研究開発しました。インドネシア人が好む旨味と脂身と辛味を考えて作りました。たまたまでしょうが日本人にも人気です。しかし『ホーリーカウ』のステーキはあくまで『インドネシアン・ステーキ』です。日本だと醤油、欧米では塩コショウがメインですが、インドネシアではハーブがポイントです。このオリジナリティーを大切にしています。
肉の仕入れや保存で苦労はありますか?
肉のコントロールは本当に難しい。オーストラリア和牛に関しては、仕入れは日本の商社でブランドと地域を限定しています。納得できる素材の維持は、最も大切なことなので、今は日本の商社から変更するつもりはなく信頼をしています。また実際に私自身がオーストラリアに出向きすべて見て確かめて、エリアと牛肉と決めました。またカットや加工の工程も厳しくチェックしました。
各店舗で売上げに差があると思われますが、売上げが悪い場合は撤退するのですか?
はい、そうします。幸いにまだ売上げが悪いための撤退はありません。
新店舗を開く際の基準はありますか?
ジャカルタで重要なのは駐車場スペースがあることです。車で食べに来る人が多いですから。今後は住居エリアで且つオフィスもあってという場所が狙い目だと思っています。
ちなみに現在は何店舗あるのですか?
『ホーリーカウ』が全21店舗のうちジャカルタ近郊で13店舗。リブをメインにしている『ホーリーリブ』が2店舗、もうすぐ3店舗になります。あとはシーフード店が2店舗。これが『ホーリー・カウ・グループ』です。他にはグループではなく共同経営ですが『フリップ・バーガー』が6店舗あります。この店はガゾリンスタンドの『シェル』にバーガースタンドを設置したくて現在動いています。目標は5年間で100店舗を目指しています。
5年で100店舗はすごい。
バーガーはある程度機械で作ることができます。人の手を煩わせなくてもよくて味の誤差も少ないため、早く店舗を広めることが可能です。それに比べてステーキは肉選びや管理、焼き方など、手がかかるし、それに伴うスキルも影響します。ですので『フリップ・バーガー』のようにスピード感を持って店舗展開していくというのは難しいのです。
ロゴの中の文字『バイ・シェフ・アフィット』が目印!
紙面で『ホーリーカウ』を紹介するにあたり何かリクエストはありますか?
実は『ホーリーカウ』は2種類あります。私がやっている店と以前一緒にやっていた者が経営している店です。私の方は『ホーリー・カウ・ステーキハウス・バイ・シェフ・アフィット』です。もう一つが『ホーリーカウ・ステーキハウス・ホテル』です。一緒にやっている頃にマネージメントを担当していた人間ですが、現在は無関係です。ロゴが同じで混同しやすいでしょうが、見分け方は『ホーリー・カウ・◯◯』の◯◯部分。さらにイラストも違います。私の店はロゴが牛の顔、顔だけです。もう一つは牛の体全体で脚まで入っています。もちろん本当は『ホーリーカウ』と名乗ってほしくないのですが、そうもいかなくて……。
知らずにもう一軒の『ホーリー・カウ』に行って美味しくなければ、もう2度と行かないってことになられると困りますね。
それはたぶん大丈夫です。例えば僕じゃない方の『ホーリー・カウ』に行ってもし美味しくなかったとしても、誰かに「美味しくなかった」と話すと思います。そしたらそれを聞いた誰かが「そっちじゃないよ」って教える人が勝手に出てきます。だから何もしなくても口づてでみんな理解してくれると思っています。
店名の末尾『シェフ・アフィット』とイラストの『牛の顔』がポイントですね。
ソースは今でも僕が作っています。未だに僕がチェックして各店舗に配送しています。
秘伝のソースなんですね。最後に話は変わりますが、日本ではここ数年の間に『いきなりステーキ』という立ち食いステーキ店が大人気です。
知っています(笑)東京に行ったときに食べました。確か渋谷だったかな?スタンディングで食べます。美味しいですよね。そして肉のグラム数によって値段が決定するのが面白い。でもインドネシアではスタンディングはダメですね。
日本で焼肉も食べたのですか?
食べました。美味しかった。日本は何でも美味しいです。でもやはりステーキです。
では最後に家庭でもできるステーキの焼き方や美味しい食べ方、肉の保存方法など教えて下さい。
焼き方は弱火で蓋をしてゆっくりと火を通すのが良いです。食べ方はどこの家庭にでもある塩、コショウだけでも十分美味しくいただけます。保存に関しては冷凍のものを購入した場合そのまま冷凍するとかなり持ちますが、解凍済みのものは1日以内に調理をするのが良いですね。一度解凍したものを冷凍すると質が落ちます。
ソースのレシピも聞いていいですか?
ごめんなさい。それは勘弁してください(笑)。是非、お店に食べに来てチェックして下さい(笑)日本人の口にも合うWソースを是非試してほしいです。
創業時のスタッフが9年経ったいまでもほとんど残っているとのこと。インタビューを通して、アフィットさんの人柄のよさやステーキにかける大きな情熱が伝わってきました。人を引き付ける力を持つアフィットさんのような方だからこそスタッフも辞めずについていくんですね。
アフィットさん、インタビューありがとうございました!
Holycow STEAKHOUSE By Chef Afit
No.12E-14A, Jl.Wolter Monginsidi, Jakarta Selatan
11:00-22:00