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【熱狂諸島】sisi 生島 尚美 氏|バリ島でオリジナルバッグ”sisi”を製作販売

外から来た人間であることをプラスに変える

2012年の暮れ、私はスタッフの前で一つの宣言をした。「これから『sisi』は、ジャカルタに進出して頑張っていく」。応援者の力を借りながらも、宣言通り、翌年に行われたジャカルタ最大級の日本系イベント「縁日祭」に参加。まずは『sisi』を多くの人に知ってもらいたいと考えたのだ。その結果、ジャカルタでも多少なりとも認知されていると知ることができた。「『sisi』さんの商品、好きなんです」という嬉しい声も頂いた。どうやら駐在員の奥様方がガイドブックを見て、知ってくれていたようだ。この結果を受け、本格的に動いた方がいいと考え、『sisi』主催イベントをジャカルタで行うことを決意。『caravan』というイベントだ。

第一回目はカフェのスペースを借りて、3日間の販売会を行った。その初日の出来事は未だに忘れられない。開店する前に時間があったので、スタッフとお茶に出かけ、開店15分前に戻った。その戻る途中で、カフェの入り口に人だかりを発見。よく見ると、それは『sisi』のオープンを待ち構えている人たちだった。カフェまで急いで走り、すぐにオープン。店内に人がなだれ込み、気がつけば、午前中で商品がほぼ完売した。3日分の在庫がだ。私は急いで、本店に電話。急遽、スタッフが商品を飛行機で届けてくれ、なんとか次の日からも販売を継続することができた。そういった経緯もあり、最終売上として、目標としていた額の3倍を達成し、ジャカルタでの販売に手応えを感じることができた。

ジャカルタでのsisi主催イベントで展示されたバッグ

その後、毎年のように『caravan』を行っているが、私の中で変わらず大切にしていることがある。それは、『sisi』単独では行わないということ。ものづくりをしているウブドやジャカルタの仲間たちと一緒にやる。『sisi』の利益だけを考えるのではなく、お客さんが何度通っても飽きずに楽しめるイベントを作ることが一番だと考えている。この『caravan』において、まさに私はオーガナイザー的な役割でもあるのだ。

ジャカルタでのsisi主催イベント1回目の時の様子

ジャカルタだけには収まらず、チカランにも興味を持った。その理由は、このライフネシアを見て、チカランに面白さを感じたからだ。しかし、チカランに詳しい人たちに相談してみたが、みんな口をそろえて「チカランには『sisi』さんの商品を買うような人はいないよ」と言われた。無理と言われれば、より行ってみたくなるのが私だ。行ってみると、工業地帯ということもあり、確かに日本人女性はあまりいなかった。しかし、諦めずに行き続けた結果、男性の駐在員さんが日本に持ち帰るお土産として購入してくれるようになった。それに加えて、今まで『sisi』では意識していなかった、駐在員さんが求めているものをリサーチして商品化し、販売した。今では、私たちが来るのを楽しみにしてくれていると言う。チカランにはチカランでしか味わえない出会いと感動があった。

今度はジョグジャカルタに行きたいとも思っている。そのあとは沖縄もいいな。どちらも、最近訪れた場所で、「どんなものが売れるのだろう?」と想像して楽しくなったのだ。

私は同じ場所でジッとできず、いつも新しいところに行こうとする。それは母から受け継いだ、もはや変えられない性(さが)だ。見知らぬ土地にだんだん馴染んでいく過程が好き。小学生の時の初めての引越しで感じた、自分の居場所をゼロから作り上げる喜びそのものだ。

ただし、私の中で、違った土地に行く時に大切にしていることが二つある。一つは、外から来た人間はその土地の人には決してなれないということ。結局、外国人であることには変わらないのだ。それは謙虚に受け止めるべきである。ただ、外国人であることはプラスに変えることができる。分からないことを分からないと言える。できないことをできないと言える。それが大きな強みになるのだ。

そして、もう一つは、その土地に寄り添いながら、自分の軸をぶらさないこと。ぶれてしまうと、海外では大切なことを見失ってしまう。そのバランスをいつも私は大切にしている。

この教訓は、すべての人に通ずることではないかもしれない。しかし、私にとっては、これが今に至るすべてである。

(2017年:週刊Lifenesia掲載)

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